20年も使用期限を過ぎたリバーサルフィルム数十本をある人から貰い受けた。
20年前といえば、父から譲り受けたカメラで写真を撮り始めた頃。
当時はリバーサルフィルムで撮影していたことを懐かしく思い出した。
ラボで現像したポジフィルムをライトボックスに載せ、ルーペで覗き込んだ時に
目に飛び込んでくる色鮮やかな世界に心躍らせていた。
あるいはスライドにしてプロジェクターで壁に投影して楽しんでいた。
当時、一連の写真をスライドショーに編集した ”feel” という作品は、
自分の制作活動の原点となっている。

初心に立ち返ってみよう。​​​​​​​
20年前のフィルムが、20年前の時を振り返るのにちょうどいいと思った。

20年の時を経て新たに撮影されたフィルムは、
劣化が著しく、カラーバランスが大きく崩れてはいたものの、
むしろその褪せた色合いにこそ、年を経た”時”が写し込まれているのを感じて、
なぜ自身が写真を撮るのか、常に問いかけてきたことの
シンプルなこたえを整理できた気がする。

激動の時代、時はますます加速していくのだろう。
立て続く衝撃的な出来事に、自らを見失いがちな時期に、
この取り組みができてよかったと感じている。
ものごとの初まりを思い出すことで、
それが今に繋がっていることを確認することができた。
自分にとって何が大切か、これからも訊ね続けようと思う。


Films Used; KODAK EKTACHROME E100SW & E100S,EXP2002

2022年6月制作
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