コロナ以降、立て続く衝撃的なできごとに、
世間への認識の仕方が変化した。
真偽の見極めにくたびれ果てた末、
事実はひとつとは限らず、世界は多層的であることを受け入れ始めた。
ひとはそれぞれに、異なる世界を見て、異なる現実を生きている。

使用期限を20年経過したモノクロネガフィルムを用い、
古いカメラで日常をスナップし、カフェノール現像した。
今を写したはずの風景は、夢か現実か惑うような、
ここではないどこかを思わせるものだった。
感度も露出も足りないノイズだらけの画像に
時代の気配が現れ出ているように感じた。

現実か否か、本当か嘘かなど、分かりようもない。
確かなのは、私が肌で感じて受け取ったことだけだ。
表に見えているものだけではなく、
その背後や深層にあるものにも感覚を開いていたいと思う。


Films used; Kodak T-MAX 100 135  EXP1999 & Kodak Plus-X pan 125 EXP2003
Camera used; OLYMPUS XA2
cafenol development


2022年5月制作
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